週末備忘録

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桜Trickの描いた軌跡をたどる

   先日、「オールナイト一挙上映3 〜夜通し桜Sweet Kiss」が開催されました。

   今年8月に6年半の連載に終止符を打ち、毎年恒例となった上映会を終えた今、連載当初からのファンとして「桜Trick」の歴史を振り返ってみたいと思います。

 桜Trickの軌跡

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    初めに、「桜Trick」とは何かという人のためにWikipediaから概要を引用すると、

各話とも必ずキスシーンが描かれているのが同作品の特徴。作者が描いた女の子同士がキスをする同人作品を見たきららの編集者から声をかけられ、それがきっかけでそういう要素のある作品を、と言われて描いたのがこの作品とのこと。ただし「毎話キスを」とまでは言われていなかったとのこと。  

   当時からまんがタイムきららは百合要素の強い作品が多かったですが、ここまで突き進んだ作品はなく当時の読者を震撼させました。毎話キスですよ毎話キス。

 

   そんな桜Trickの掲載雑誌「まんがタイムきららミラクは今から約7年前の2011年3月16日、「もっと自由に4コマを。」をキャッチフレーズに掲げ創刊号が刊行されました。ほぼ全員が漫画初挑戦の新人作家ということで一部の間で話題になった覚えがあります。そういう訳で今までのきららとは一線を画した世界観の物語が非常に多い中、比較的「きらららしさ」を残した本作も創刊号から掲載タイトルの中に名を連ねていました。

   1話目から空き教室でディープキスをする作品が「きらららしい」と思われるほど、ミラク創刊号の作品は曲者揃いだったのです。

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   創刊から1年ほど隔月刊だったミラク当時の芳文社の株価は桜Trickが読める月と読めない月で大きく変動するほどでした。今適当に思いついた作り話ですが……

 

    その後、創刊号からその存在感を発揮した本作は段々とファンを獲得し2012年5月号で初のセンターカラーを獲得。2013年8月号でアニメ化が告知されます。この時が初の巻頭カラー。加えて、その影響か一時期「ミラク」の裏表紙に芳文社と一切関係のない百合ゲーの広告が掲載されます。百合の力は偉大。

   あと、これは覚えている方も多いと思うのですが、アニメ化の情報は雑誌発売より少し前にネット上でリークされ、Twitterトレンドに「桜Trick」のワードが登場しました。注目度の高さが伺えます。

   因みに、「ミラク」内初のアニメ化作品であり、この頃には名実ともに「ミラク」の看板漫画としての地位を築いていたことも分かりますね。

 

   そして2014年1月、ついにアニメ第1話が放送されます。メインキャストが豪華なこともありTwitterや実況スレは大きく賑わっていました。本編が始まります。アバンは単行本第1巻の書き下ろしエピソードから。このエピソードは入学前の春香の心境と優ちゃんとの関係性をわかりやすく視聴者に伝えることが出来るもので、導入にこのエピソードを用いた制作会社はわかっているなと感心させられたものです。

   迎えたOP画面に映ったのは春香と優のディープなキス。あのキスの衝撃は一生忘れることができないという人も多いでしょう

   しかし、そんな百合厨の感動を他所に、百合耐性のない人々が次々と「切った」のが思い出されます。悲しい。当時はきららアニメと言えばひだまり、けいおんきんモザくらいなものでここまで突き進んだ作品は受け入れられなかったのでしょうか。4話放映時にもなると実況に残るのは選ばれた者たちだけと言った感じで独特な雰囲気を放っていました。こういった事情から一般ウケはしないものの根強いファンが多いというのも本作の特徴です。

   ただ、放映中に話題になったOPの謎ダンスは視聴未視聴に関わらずみんな踊れる気もします……(オタク特有の主語の肥大化)

   アニメに関しては今更特に言うこともないのでこれ以上言及しませんが、演技、演出やキャラの心理描写など非常に良くできた作品なので、興味のある方はきっと観てくださいね。 

 

   アニメ化を終えた2014年4月、テレビアニメ公式ガイドブックが発売されます。

   このガイドブック、もしアニメを観たのに読んでいない人がいるとしたら、それは非常に勿体ないので是非読んで欲しいです。

   個人的にオススメなのはキャラクター紹介のページ、各キャラのプロフィールに石倉賢一監督とタチ先生によるコメントが添えられているのですが春香ちゃんが公式からヤンデレズ呼ばわりされているのがツボでした。

   他にもキャスト、美術設定、監督、プロデューサーインタビューなど非常に読み応えのある一冊となっているのですが、なんと言っても巻末のタチ先生ロングインタビューは素晴らしいもので、原作者の百合作品への思入れや桜Trickの目指す方向性などが書かれていて必読の一言。

   同年8月のイベント「SBJK」(ここでのSBは嫉妬深いではなくSummer Blossomの意)も非常に盛り上がり、2014年はまさに桜YEARといった感じでした。

 

   アニメ関連のイベントが終わっても当然連載は続き、12月には単行本5巻が発売され順調に物語は進む「桜Trick」。この辺りから楓ゆずの関係性が深まっていった気がします。

   余談ですが、この5巻の発売日はちょうど12月25日のクリスマス、恋人と一緒に過ごす人と特典を目当てに各地アニメショップを走り回る人との対比が面白かったです。桜Trickは恋人。

 

   その翌年、初の桜Trick」オールナイト一挙上映 ~夜通しWon(*3*)Chu KissMe!~ が行われるなど、前述の通り根強いファンがいるからこそのイベントも開催されたりしました。当時はこれが毎年恒例の行事になるとは思いもしませんでした。

 

  それから、特に大きな動きはないものの着実とストーリーは進んでいきます。この辺りからアニメの公式アカウントが意味不明な挙動を見せ始めました。

 

  そして、2017年8月、6年半という長い連載もまんがタイムきららミラク10月号にて幕を下ろします。きらら漫画は最終回に表紙を飾れない……なんてこともよくありますが、そんな心配をよそに表紙に描かれた春香と優、その横に書かれた「桜色の物語完結——。」の文字。感激、慟哭、様々な感情が入り混じり涙を堪えることが出来ませんでした……

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   「もっと自由に4コマを。」のキャッチフレーズから生み出された「まんがタイムきららミラク」。最終回での大胆なコマ割りはそれを象徴するようで、タチ先生の「ミラク」に対する回答なんじゃないかと思わされます。

   こうして、2017年9月27日「桜Trick」8巻、完結巻が発売されました。帯に書かれた—愛はキスを変える。kiss,forever.」の文は「桜Trick」を象徴するかのような名文です。考えた人はノーベル文学賞なんかを受賞されるでしょう。

  タチ先生、長い間連載お疲れ様でした。

 

   その後、「まんがタイムきららミラク」も「桜Trick」完結から2ヶ月後、12月号にて休刊の発表がされます。これに関してはいろいろ思うところもあるのですが、書くと長くなりそうなので今回は割愛させていただきます。

   ただ、創刊号から約6年半の間様々な作品への出会いの機会を与えてくれた「まんがタイムきららミラク」という雑誌には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

 

 最後に

   今回はこのように簡単に「桜Trick」の歴史を振り返るだけになりましたが、これをきっかけに「桜Trick」に興味を持ってくれる人が1人でも増えたら嬉しいです。終わり。